古志
句会日記18
4月13日、大谷主宰出席の東京句会。
桜の花も散り、黄緑色の若葉がちらほら出てきた渋谷表参道。吉野山観桜句会の前日であったが、32名が参加。青年部部長の石塚直子さんが初参加。
春愁や棘といふ字の痛さうな わたなべかよ
富安風生の句に〈皹といふ痛さうな言葉かな〉がある。皹(あかぎれ)の痛さとはまた違う、棘の痛さ。島尾敏雄の『死の棘』を思い出した。また、風生には〈黴といふ字の鬱々と字画かな〉という句もあるが、文字を文字で詠むということ自体も面白い。ただ、風生の句は一物仕立てであり、この句は取り合わせ。主宰から、上五を別の季語で取り合わせてはどうか、というアドバイスがあった。自分だったらなんとおくか、考えてみよう。
蟻の穴ゆづりあつては出つ入りつ 小宮節子
誰もが目にしている光景である。にもかかわらず、はっとさせられるのは、蟻たちが「ゆづりあつて」いるととらえたところにある。そこに、作者のお人柄が感じられる。また、言われてみれば、たしかに蟻はゆずりあっている。蟻はゆずりあったりしないという思い込みが、そう見させないだけなのだろう。
今月は特選句が出なかった。東京句会始まって以来のことではなかろうか。来月は主宰がとりきれないほどの特選句を出したいところ。
関根千方記
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