句会日記12
2月9日、大谷主宰出席の東京句会に参加。
立春のあと、たちまち冴えかへる東京。参会者は32名。久しぶりに、川村玲子さん、辻奈央子編集長がみえた。
第一句座、前書きに「市川きつねさん出産」、
その命雪と名づけて春来る
という句がまわってきて、互選を独占した。主宰の句であったが、選句でこの句がまわってくると、みなさんの顔が自然とほころんでいるのがわかった。座の文芸ならではのよろこびをあじわった(きつねさん、おめでとう!)。
日の本の鬼をやらひて逝かれけり 大場梅子
生があれば死がある。この句は、十二代目市川團十郎への追悼句。ほかにも多数みられ、「暫く」という文字がいくつも流れてきたのが印象にのこった。ほんとうに広く愛された役者さんだったのだろう。また、歌舞伎と俳句の縁の深さも感じられた。
蛇笏の山龍太の川に春の色 片山ひろし
主宰より、蛇笏にも川の句があるし、龍太にも山の句はあるが、やはり、蛇笏は「芋の露連山影を正しうす」の句、また龍太には「一月の川一月の谷の中」の句がとりわけ印象深いという評があった。このように二つ並べるとなおさら際立ってくるように思える。しかも、秋でも冬でもなく、春めいてきたというところに句の広がりを感じる。
きしませて羯諦羯諦鞦韆こぐ 勝又眞子
主宰曰く、ぶらんこのきしむ音を般若心経の呪文へ転じる、その発想の飛躍がすばらしいとのこと。
恋猫となるべく抱かれロシアより 神戸秀子
今月絶好調だったのは、神戸さん。一座目と二座目の合計8句のうち、特選2句、入選3句。なかでも、この句が一番面白いと思った。ロシアの貴婦人のごとき猫。眼の色まで想像できる。外交パンダならぬ、外交猫とでもいうべきか、ロシアと日本との微妙な関係を背景に読むこともできよう。主宰は「スパイの可能性もある」とおっしゃっていた。
関根千方