古志
句会日記1
7月14日、大谷主宰出席の東京句会に参加。
梅雨明け間近の猛暑日。
それでも34人もの参加者が集う。
一座目の雑詠で、箱庭の句が二つ出た。
箱庭の人に一番星の出て 神戸秀子
箱庭に月を見上ぐる翁をり 熊谷佐幸
どちらも夜の箱庭。そのなかの人を詠んでいる。
主宰は虚子の〈箱庭の月日あり世の月日なし〉という句を挙げ、
「箱庭のあはれ」とおっしゃった。
なるほど、箱庭は虚の世界であり、生はない。つまり、死の世界。
死の世界の住人とは、なんとあはれなことか。
しかし、この死の世界は、どこか詩の世界にも通じるものがあるかもしれない。
虚子には〈箱庭の人に古りゆく月日かな〉という句もあるが、
主宰が挙げた箱庭の句では、「あはれ」を嘆いてはいない。
虚実を反転させ、むしろ「あはれ」を積極的なものに変えている。
二座目、席題は「日盛」「蟇」「トマト」。
蟇この世の会話聞いてをり 望月知子
主宰曰く、「この句では、蟇はあの世の声も聞けるということになります」。
死の世界とこの世の世界の狭間にいて、
この世の声を聞いている、蟇。
たしかに、水と陸のあいだを行き来する両生類ならうなづける。
関根千方
If you enjoyed this article, please consider sharing it!